パリ2024 オリンピック閉幕【まとめ記事】

パリ2024 オリンピックが閉幕!
栄スポーツセンターでは日本人選手を応援するため、メッセージボードやメダルカウントボードを設置しておりましたが、パラリンピックに向けて引き続きコーナーを設けております⇒オリンピック・パラリンピックボード開設中!
当センターにお越しの際はぜひお立ち寄りください♪

また、今回は知っていると観戦がさらに楽しくなる?豆知識や情報をいくつかご紹介したいと思います😀

競技別に見る日本人の累積獲得メダル数

オリンピックで気になるのはやはりこの数字ではないでしょうか?
ここでは東京2020大会までと今大会も含めた数について触れてみたいと思います。

1位の体操や2位の柔道は「お家芸」と言われているだけあって流石という印象ですね!
全体を通してみると今大会は金20・銀12・銅13で金メダル獲得数は海外開催としては新記録、総数は過去最高という素晴らしい結果でした!
金メダル獲得順位(表右上)には変動がなかったものの、レスリングは今大会だけで8個を獲得。これは全競技で獲得した20個のうち4割にあたりますからいかに目覚ましい活躍だったかがわかりますね。また、累積でのメダル合計獲得数では競泳を抜いて3位に上がりました。
同じく9位に上がったスケートボードも注目です。東京大会から正式競技となり多くの金メダリストが誕生しています。また、表には載っていませんが、今大会のフェンシングは金2・銀1・銅2を獲得する活躍ぶりで、今後も楽しみになりそうです。

その他話題となったのは、メディアでも紹介されていましたが、メダル通算500個目というメモリアル記録です。
こちらは見事、柔道女子48キロ級の角田夏実選手が金メダルを獲得しての達成でした!おめでとうございます✨

ここからはメダル獲得数上位の競技について、いくつか強さの秘訣に触れたいと思います。

練習量は嘘をつかない【体操】

メダル総獲得数1位の体操。一般的に選手生命の短い競技のため、同一の選手が連覇をしたり複数のメダルを取ったりすることが難しいにも関わらず、これだけ多くのメダルを獲得してきたわけですから、いかに多くの日本人選手がトップクラスの成績を残し続けてきたかが良く分かります。それゆえ、いつの時代でも印象に残る選手は多いのではないでしょうか?パリ大会でも複数のメダル獲得が期待されました。

そんな中、今回触れたいのは、日本代表選手だった米田功さんです。
栄スポーツセンターでも2023年の春先、米田さんをお招きし、こども達を対象とした体操教室を実施していただきました。
米田さん自らが技を披露してくれたこともあり、多くのこども達の記憶にも残ったことでしょう。

そんな米田さんは幼少期から体操を始め、厳しい練習を続けることで中高生の頃には大会で輝かしい成績を残すようになります。ところが、転機になったのは大学時代。それまでの厳しい環境とは打って変わって、のびのびとした環境に身を置くことになったのです。徐々に練習をしなくなっていきますが、それでも大会では相変わらず良い成績を残し、これが後々慢心を生むこととなりました。その結果、2000年のシドニー大会ではまさかの代表落選となってしまいます。ただ、これを機に心を入れ替え、再び厳しい環境下で猛練習に励むこととなります。その甲斐あって2004年のアテネ大会ではキャプテンとなり、団体では見事優勝、金メダル獲得に貢献をします。(種目別でも鉄棒で銅メダルを獲得しました。)

練習量は嘘をつかない。まさにこれが体現された瞬間だったのではないでしょうか😌

2022年に引退された絶対王者・内村航平選手も、とんでもない量の練習をこなすことで有名でした。そんな内村さんが「同じ時代にいたら勝てないかもしれない」と語ったのが橋本選手。今大会はオリンピック直前に痛めた左肩や右手中指などの影響で苦しい演技が続いていました。団体戦のあん馬でも落下がありましたが、杉野選手が全体2位となるハイスコアを取り、主将の萱選手も素晴らしい演技とともに、「絶対に諦めるな」とチームを鼓舞したことが結果的に大逆転での金メダルへと繋がったように思います。また、日本人が苦手とするつり輪では谷川選手がスコアを稼ぎ、岡選手は出場した4種目全てで高いEスコア(技の美しさや正確さ)を叩き出し、団体金に貢献をしました。まさにメンバー全員で勝ち取った金と言えそうですね!

快進撃は個人戦でもありました。オールラウンダーの岡選手が個人総合でも安定した演技を披露し、金メダルを獲得!種目別の鉄棒でも金メダルを獲得し、団体総合と併せて3冠を達成しました!さらには平行棒でも銅メダルを獲得し、合計4つのメダルを首に掲げる姿は衝撃的でしたね!元々、岡選手は社会人まで強豪校には所属しておらず、じっくりと身体づくりをし、今大会での大活躍へと繋がった特殊な経緯を持っています。これは現在体操をしているこども達にとっても選択肢が広がり、新たな成功モデルとなっていきそうです。そういった意味でも大変価値のある大活躍だったのではないでしょうか。

フィジカルの弱さをそれ以外でカバーする【柔道&レスリング】

合計のメダル獲得数で言えば2位と3位ですが、金メダルの数だけで比較すると1位、2位です。
冒頭で触れた通り、パリ大会でも柔道の角田選手が金メダルを獲得しました。また、大会前から話題となっていた阿部兄妹の史上初となる兄妹連覇は残念ながら成し遂げられなかったものの、兄・一二三選手は妹・詩選手の分まで奮闘し、連覇という偉業を達成しました😭 次回、また兄妹で金メダルを取ってくれたらこの上なく嬉しいことですよね。そして、男子81キロ級の永瀬貴規選手は同階級で初の連覇という偉大な記録を打ち立てました!気が早いですが、次期大会の3連覇も達成してほしいですね!
一方のレスリングでは須﨑優衣選手が東京大会で金メダルを獲得しており、こちらも連覇に期待がかかっていました。ところがまさかの1回戦敗退…連覇というものがいかに難しいかを知らされた瞬間でもありました。それでも3位決定戦では気持ちを切り替えて相手を圧倒。意地の銅メダルには感動を覚えました。また、冒頭でも触れたとおり、レスリングは金8個を含むメダルラッシュ!東京大会までは女子の活躍が目立っていましたが、今大会は男子の活躍も目覚ましかったですね!

そんな2つのルーツを紐解いていくと、柔道は嘉納治五郎先生が創始者であり、もちろん日本が発祥です。柔術を基にして作られたということも広く知られていることかと思います。ちなみに嘉納先生はオリンピックにも深く尽力された方で、1940年の東京オリンピックの誘致成功にも導いた方です。しかし、戦争を理由に開催権を返上し、1964年の再誘致、初開催まで延びてしまったことは残念なお話です。

一方、レスリングの起源は非常に古く、紀元前3000年から行われていたとのこと。古代オリンピックの競技であり、近代オリンピックでも第2回の1900年パリ大会以外は全て実施されているという、とてつもない伝統や歴史を持っています。

ルーツが全く違う2つではありますが、投げ技や組み技が多いことから共通点も意外と多く、柔道とレスリングが合同で練習や合宿を行うことも珍しくありません。ではなぜここまで日本人は柔道やレスリングにおいて強いのでしょうか?

昔から日本人は体型的に小柄でその分、筋肉や筋力などのフィジカル面において外国人選手に劣りがちでした。現在では豊富な栄養を取ることによって以前よりかはその差は縮まっていますが、それでもなお弱い部分と言えるでしょう。
しかしその一方、元来、日本人は高い技術力に優れ、そこに加えて猛烈な練習量に裏打ちされたスタミナ、メンタルを手にすることができました。実際今でも、国内合宿に参加する外国人選手が日本人の練習量についていけずヘロヘロになっている姿が見受けられます。こういったことからフィジカルでは劣っていても海外の選手に勝つことができたと考えられます。

また近年では、柔道・レスリングともに海外遠征や練習会などを通し、積極的に交流を深めています。これは間違いなく世界的な競技人口の増加に寄与しています。国内や国外、人種等の垣根を越えてお互いに切磋琢磨できる環境は大変素晴らしい点の1つではないでしょうか。

一方、”国内”に限ってみると両者の競技人口には大きな差があります。
柔道は約12万人、一方のレスリングは約1万人。文字通り桁違いの差となります。

競技人口が少ないのにメダルを多く獲得していると捉えれば凄いとは思いますが、代表選手と控え選手の間に差が生まれやすく、何らかの理由で代表選手が大会に出場できなくなると、メダル獲得も難しくなってしまうという危うさを持っています。逆に柔道の場合には、代表選手と控え選手にほとんど力の差はなく、仮に控え選手が大会に出場しても十分にメダルを獲得する可能性は高い、つまりそれだけ選手層が厚いと言えます。これが安定してメダルを獲得し続けられる要因と考えられます。

そんな柔道もコロナ禍の影響を受け、競技人口は大幅に減ってしまいました。今後も良い成績を残すためには、国内での普及活動、競技人口の増加がカギを握ると言えそうですね💡

厳しいコンディションを乗り越える【競泳】

競泳もまた日本人選手が強い競技の1つです。かつては鈴木大地選手、岩崎恭子選手、北島康介選手など記憶に強く残っている選手も多いのではないでしょうか。また、人物だけでなく、名言も多く生まれている印象があります。

さて、どんな競技でも大会時のコンディションというものはパフォーマンスに影響を与えるものです。競泳においては水深や水温などが関係をしてきます。
水深は浅くなると波が発生しやすくなり、抵抗を受けやすくなるため、深めの3mが一般的とされています。ところが、パリ大会の会場は2.2mということで少なからず影響はあったと考えられ、元々レーンによる影響(端に行くほど抵抗が生まれる)もありますから、選手にとっては中々ハードな環境だったかもしれません。

一方の水温ですが、一般的には低い方がプラスに働きます。これは血液中の赤血球が酸素と結びつきやすくなるためで、体内の細胞に酸素を送りやすくなるからです。細胞は手に入れた酸素を利用し、多くのエネルギーを生み、長時間動くことができるようになります。いわゆる有酸素運動ですね。
一方、温度が高くなると酸素を手放しやすくなり、それを補おうと多くの呼吸が必要になります。つまり、すぐに息が上がってしまい、苦しくなりやすいのです。
この話は地上でも同じことが言えます。長距離、特にマラソンなど走る時間や距離が長くなるほどパフォーマンスに大きな影響を与えます。そのため、マラソンなどの長距離種目は冬がシーズンなんですね。

話を戻しますが、オリンピックをはじめとする大きい大会では、水温についての基準も細かく定められており、25~28℃となっています。一般的に遊泳用のプールは概ね30℃ほどに設定されているので、低めというのがわかります。裏を返せばパフォーマンスを発揮するにはこれくらいが適切ということになるわけです。ただ、3℃という幅は、結構な差とも言えます。先ほど【柔道&レスリング】の部分で日本人は筋肉量が少ない傾向にあるとお伝えをしました。筋肉量と熱の産生は比例関係にあるため、日本人はそこまでたくさんの熱を生み出せない、ざっくりと言えば日本人は寒がりが多いということです。そのため、生理的に水温は低い方が良いものの、日本人選手に限っては範囲の上限付近がコンディション的に好ましいと言えるんですね。

実際に過去のデータを見ると、1996年に行われたアトランタ大会では水温が低かったことが影響し、メダルの獲得はありませんでした。また、オリンピックではないものの、2023年に行われた世界選手権(福岡)でも水温が低めで、競泳陣の成績が振るわなかった原因として挙げられています。(銅2個のみ)
ところが、2016年のリオ大会ではこれまた水温が低めだったものの、メダル数は7個(金2・銀2・銅3)と健闘を見せています。

そんなデータがある中で今大会どうだったかと言えば、残念ながら厳しい結果となってしまいました。(松下知之選手の銀メダルのみ)
競泳全体の記録を見ると世界記録やオリンピック記録が結構出ており、決して悪いコンディションではなかったと考えられます。プレッシャーや現地の雰囲気に飲まれ、普段通りの力を出せなかった選手が多かったのではないでしょうか。それでも今大会は、出場した高校生全てが決勝を経験できており、これは大きな財産です。今後もこういった経験を多く積み、技術や体力にもさらに磨きをかければ4年後、8年後、選手によっては12年後も活躍できる可能性は十分にあります。そこに期待をして今後も応援をしていきたいですね!


さて、いかがだったでしょうか?「ためになった」「面白かった」などと思っていただければ幸いです。
近年のオリンピックではスポーツクライミングやスケートボードなどいわゆるアーバンスポーツが競技として取り入れられ、日本人の強さも光ります。
今のところ今大会限りのブレイキンでも、AMI(湯浅亜実)選手が金メダルを獲得。一方、開会式で旗手を務めたShigekix(半井重幸)選手は惜しくもメダルには手が届きませんでしたが、常に笑顔でキレのあるダンスを披露し、周囲を魅了した印象があります。この競技の面白さ、素晴らしさは十分世界中に広まったように思えます。

多くの感動や興奮をもたらしてくれた選手に拍手を送りたいですね👏
最後までお読みいただきありがとうございました!